第二話 大切な実習!継続さん

今なお、自分の元となっている1つに実習での学びがあります。

 
徳島の学校では、定期券を買って通うほど、期間が長い保健師の実習がありました。

これは、学生4人のグループ単位で、同じ地域の保健所と町村役場のそれぞれで、実習するんです。
保健所と町村役場の保健師さんの隣に学生4人分の机が設置されているぐらい力が入っています。

 
そんな環境の中、保健所と町村を行き来しながら多くのことを学び、乳児健診や健康教育といったことから、自転車で家庭訪問や、地区データの分析・把握に明け暮れました。

そして、授業以外の時間や夜間には、お産があれば、自転車で病院にかけつけるという日々。

 
何より素晴らしかったのが、「継続さん」と言って、産科外来で「妊娠おめでとうございます」と言われた時から、妊婦さんに学生が1人ついて、担当するシステム。

県立の学校なので、県立病院のすぐ隣に学校があり、継続さんになる妊婦さんの了解が得られたら、すぐに学生が呼ばれて自己紹介。
そして、妊娠の各期に合わせた保健指導と家庭訪問を学生が担当します。

 
妊婦健診の同行はもちろん、出血や体調不良で病院に連絡や受診をしたら、学生にも連絡が入るようになっていて、一緒に受診に立ち会えるシステムになっていました。

そして、陣痛がきたらお産を取り上げさせてもらい、退院後は家庭訪問をして、赤ちゃんの体重を測らせてもらい学生は卒業と国家試験を迎えるのです。

妊娠の喜び、そして、妊婦さんと一緒になって胎児の発育を喜び、心拍の出現に感動し、出血が何でもなかったことに心から安堵する。

自分のお腹に変化はないものの、気持ちはかなり妊婦さんに近い位置で、一緒に妊娠の経過を体験させてもらえるのです。

 
「学生さんには聞きたいこときけるけん、いいんよ(徳島弁)」

と言ってくれる継続さんの期待に応えるため、無事に出産を迎え育児に取り組めるという目標に向かって、みんな必死に勉強し、徹底的に調べ倒します。

 
また、学生同士、夜が更けるまで、体験したことのない妊娠や出産を語り合ったりもしました。

そして、継続さん一人一人に合わせた「聞きたいこと」や「必要なこと」を盛り込み、この世にひとつの継続さん用のリーフレットやパンフレットを作成するのです。

「喜んでもらえるかな」
「かわいいと言ってもらえるかな」
と、みんなわくわくしながら、
それぞれオリジナルのパンフレットを作成していました。

 
さらに、学生一人一人に学校の教員がついて、個別に合わせた保健指導をアドバイスしてくれます。
何度も何度も作り直して、OKがもらえたら、家庭訪問でやっと継続さんに伝えることができるのです。

 
こうやって継続さんの赤ちゃんが無事に生まれてきてくれたときには、ただただ感動で涙があふれました。

この体験から、一人ひとり違った妊娠や出産の経過があり、それに合わせて対応する技術が看護には必要であること。

そのために、人の大切な人生に関わるという看護者の自覚をもち、現役である限り、一生勉強し続けなければならないということも学びました。

 
ちなみに、私の「継続さん」は、頑張り屋で何事にも努力する方で、働くお母さんのモデルのような方でした。

予定日の確定から担当となり、私にお産介助を任せてくれて、元気な男の子を出産。

のちに、私が結婚した時に「元気な男の子」は3歳になり、徳島から結婚式の花束贈呈に来てくれました。
しっかり大きくなっていて、うれしかったなあ、あんなに小さかったのに。
そしてその子も今は20歳に。
立派な成人式の写真。ステキ!本当に感動です。

6ミリくらいの大きさから、立派に社会人として働くまでお付き合いさせていただくなんてこんな出会いにも感謝です。

 
結局、私は徳島で継続さんを含めて13人の赤ちゃんをとりあげ、無事に助産師と保健師の免許をとって、また北海道にもどりました。

そして、保健師と助産師を学ぶために全国から集まった同期の仲間達は、それぞれ保健師として、助産師として、地域で活躍するために、全国各地に就職。

そのうちの一人は、阪神淡路大震災の時に、停電で閉じ込められたエレベーターの中で、産婦さんを励まし、懐中電灯ひとつで赤ちゃんをとりあげて、育児雑誌にのりました。

それを聞いて、大変な状況でも、逆境を乗り越えて助産師としての責任を果たす、きっと、徳島でのいろいろな学びが活かされたんだと私は感じました。

 
私は徳島でのいろいろな学びをどんどん発揮していこう!
と、意気込み勇んで、再び北海道へ戻りました。

 
当たり前と思っていたおいしい空気と農作物、広い大地、豊かな自然・・・(豊かな自然は徳島にもあったけれど(笑))

 
北海道のメリハリある四季の移り変わり。
夜は涼しい北海道の夏。
やっと雪が見れる、そしてスキーができる、

 
一度北海道を離れ、あらためて、北海道の良さをかみしめて、ただいま北海道!

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